2017年05月11日

「どこでもカメラ」の安全と不安

セキュリティ・コラム by MM総研所長 中島洋

 「どこでもカメラ」の時代になった。防犯カメラの話である

東京メトロと東京都交通局(都営地下鉄を運行)は、乗客の安全対策の一環として、双方で所有する合計約3800両の全車両に防犯カメラを設置し、地下鉄車内の様子を「常時録画」することを決めた。公共空間での防犯カメラについては「プライバシー」か「安全」かの議論があったが、「安全重視」に落着しそうだ。

ただし、トラブルが起きた際の参照情報に使用するのが目的なので、保存期間は制限し、1週間程度。記録映像は各車両に設置したハードディスクに保存し、1週間程度で容量がいっぱいになった段階で自動的に上書きされる仕組みである。窃盗や痴漢、暴力事件などのトラブルが起きた場合、1週間以内に要請があれば、記録画像をチェックして犯罪の確認や犯罪者の追及、解決に役立てる。

プライバシーに対する配慮として、「閲覧できる担当社員を限定し、厳重に管理する」と説明している。車内全体が見えるように、メトロは乗降ドアの上、都営地下鉄は天井に複数のカメラを設置し、作動中を知らせるステッカーを掲示する。

他の鉄道路線でも、車内の防犯カメラ設置は進んでいる。すでに鉄道の車内の常時録画については、東海道・山陽新幹線や北陸新幹線で開始、東京急行電鉄も20年までに全車両に設置する計画である。

公共の場にカメラを設置することに関して、「プライバシー」の観点から根強い抵抗があった。繁華街に設置することは許可なく通行人を撮影、保管し、肖像権を侵すと反対された。こういう抵抗をやわらげるためか、呼び名も「監視カメラ」は少なくなって「防犯カメラ」が多くなった。めったやたらに市民を「監視」するのではなく、使用目的を「社会の安全のため」と限定した。

その脈絡から、目的外の利用には厳しい反対も出た。主要駅の構内に設置したカメラで通行者の顔や歩行姿勢、速度などから特徴を抽出してマーケティングデータとしても利用しようとした実験は、「防犯とは性格が異なる」と、強い抵抗にあって、結局、中止せざるを得なかった。

一方で、「防犯カメラ」は急速に普及した。商店街、商業施設、コンビニ、スーパーなどの流通施設、マンションのエスカレーターの中、廊下や玄関、小学生の通学路、人通りの少ない裏道、タクシーの車内や前方、駅構内、そして今度は電車の車内、というわけだ。

ただ、こうして社会の安全は高まるものの、心配なのは「情報の安全性」だ。

サイバー攻撃の「脆弱性」の点検が進むにつれてはっきりしてきたのは、インターネットに接続する家電製品や事務機器、各種情報機器、いわゆる「IOT機器」のセキュリティー対策が十分でないことである。とりわけ防犯カメラについては問題が指摘されている。

電車の中の防犯カメラも、1週間は車内に置いたハードディスクに保存する、ということだが、ここから情報が流出しないような対策も不可欠だろう。「情報の安全性」が保たれなければ、「社会の安全」のメリットも一気に吹き飛んでしまう。

ZenmuTech からのコメント by CTO 友村清

 公共空間での防犯カメラについては「プライバシー」か「安全」かの議論が落着しても、議論が再燃することは可能性は大きいと考えます。1週間とはいえハードディスク上に自分の姿が保存されていると考えると、この期間に車両のハードディスクがハッキングされて漏洩した場合には公共空間での防犯カメラの存在自体をも否定される可能性があります。

「プライバシー」と「安全」を両立される手段として、秘密分散などを利用することが良いと考えます。

カメラで撮影された映像を即座に秘密分散処理などにより「無意味化」し、一部を鉄道ネットワークで車両基地等のハードディスクに保存、ほとんどを車載のハードディスクに保存します。どちらもハードディスクに保存された映像は、「無意味化」されていますので、もし、情報漏洩しても映像を復元することはできません。本当に必要な場合のみ復元化することで、「プライバシー」の観点から反対する人にも受け入れられるのではないかと思います。

ZenmuTechでは、無意味化ソリューション「ZENMU」のエンジン部分をSDKとして提供しておりますので、様々な分野で、ご利用いただけます。

ZENMU SDK の概要は、こちら

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